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  • #301 返信

    四九三

    ドイツ語の名詞他について,以下質問をさせていただきたいと思います。

    1.ドイツ語の名詞:ドイツ語の名詞も英語同様に可算名詞,不可算名詞,或いはケースにより可算,不可算名詞のいずれにも使われるということはあるのでしょうか。英語では,可算か不可算の選別はネイティブ以外には難しい部分であり,ドイツ語も同様なのか教えて下さい。

    2.ドイツ語の文法性:古期英語の文法性の消滅のように,将来ドイツ語の文法性も消滅,或いは男性,女性のみに簡略化されるということはあり得るのでしょうか。そもそもドイツ人自身は文法性についてどのような感覚を持っているのでしょうか。ネイティブは,文法性の違いによって,何らかのニュアンスの違いを感じ取っているということでしょうか。

    3.Common Errors:ドイツ人にも頻繁に犯す文法上の誤りはあるのでしょうか。ある場合,どのような誤りを犯すのでしょうか。

    宜しくお願いします。

  • #302 返信

    tmasa
    キーマスター

    こんにちは。返事が遅くなりました。ご質問に対しまして、私の分かる範囲でコメントさせていただきたいと思います。

    > 1.ドイツ語の名詞:ドイツ語の名詞も英語同様に可算名詞,不可算名詞,或いは
    > ケースにより可算,不可算名詞のいずれにも使われるということはあるのでしょうか。
    > 英語では,可算か不可算の選別はネイティブ以外には難しい部分であり,ドイツ語も
    > 同様なのか教えて下さい。

    はい、ドイツ語の名詞にも可算名詞に分類されるもの、不可算名詞に分類されるものがあります。それぞれ、状況によって可算・不可算名詞として使われることはあります。
    英語やドイツ語など、名詞の単数と複数の別がはっきりしている言語では、可算名詞には不定冠詞が付き、不可算名詞は無冠詞か常に複数形で用いられるという傾向があります。日本語は複数形態素が乏しいので、英語やドイツ語などの言語ほどの名詞の単複体系はないでしょう。部分的に「~たち」「~ども」「~ら」「~々」を使った複数形は作れますが、「鉛筆」や「携帯電話」などに複数形態素は付けられません。また日本語には冠詞の体系もありません。ドイツ語の不可算名詞は主に【質量名詞(または物質名詞や集合
    名詞)】と呼ばれる名詞群で、その名詞が指す内容の集合体の中から一部を分割して取り出しても内容物は変わらないというものが相当します。たとえば液体を表す名詞はどこで切っても、どれだけ一部を取り出しても(質量は変わりますが)その液体であることは変わりません。「家具」のような集合名詞も不可算名詞です。可算名詞のほうは一部を切り出してしまうとそれはその物体ではなくなります(極端にいえば、「車」を真っ二つにするともう走れませんし、「人」を切ると刑事事件になります)。
    可算名詞を状況によって不可算名詞として扱う場合には、たいていは複数形にしてしまって「集合的な性質」を出します。反対に不可算名詞を可算名詞として扱うのは稀ではないでしょうか。かなり状況に依存します。たとえば不可算名詞「コーヒー」はドイツ語で Kaffee といいますが、これは不可算名詞ですので、数を数えたいときには「容器」を表す語をつけて数えます(これは英語と同じシステムです)。eine Tasse Kaffee, zwei Tassen Kaffee ‘a cup of coffee, two cups of coffee…’ という具合です。Kaffee はそのままで「カップ」のほうを数え上げます。しかし、喫茶店などの特定の状況では、einen Kaffee, zwei Kaffee… ‘one coffee, two coffee…’ というように言うこともできます。

    > 2.ドイツ語の文法性:古期英語の文法性の消滅のように,将来ドイツ語の文法性も
    > 消滅,或いは男性,女性のみに簡略化されるということはあり得るのでしょうか。

    一定の規則に基づいて“新語”も男性・女性・中性のどれかの性別に分類されます。これからますます“新語・外来語”がドイツ語にも入ってくるでしょうが、それらがたとえば何でもかんでも中性名詞に割り当てられるのであれば、もはや男性名詞や女性名詞には生産性はなくなり、既存の語で性別を保持するだけになるでしょうが、実際には形態・音韻・意味などから、どんな新しい語・概念でも、男性や女性名詞にも割り当てが起こっています。また、非語(実際には存在しない単語)の性別を問うテストでも、一定の規則から性別が割り当てられています。
    また、ドイツ語は英語などと違って、語順が比較的自由ですので(ただし、定動詞の位置は固定です)、同一文に名詞が複数個ある場合に、それらの性別を含む【格】【数】などの情報をもった【冠詞】の果たす役割が大きいです。冠詞がなければその名詞の【性・数・格】が分からず、文構造の解釈が非常に難しくなるからです。ということは、名詞の【性】はその冠詞の形態に大きく関わっているわけですから、この先もドイツ語の名詞の性は衰退しないかもしれません。語順が(中国語のように)完全に「主語-動詞-目的語」の固定語順になっているような言語では、名詞の【性・格】などの情報は形態的に明示されていなくてもよいかもしれませんが、ドイツ語のように語順が自由で「目的語1-動詞-主語-目的語2」など多様なパターンを見せる言語では、それぞれの名詞がその文で果たしている役割を形態的に明示しなければなりません。その形態具現に【性】も関わっているので、ドイツ語では性の情報は必要だと考えられます。

    > そもそもドイツ人自身は文法性についてどのような感覚を持っているのでしょうか。

    名詞の性の決定は、形態(たとえば接尾辞)や音韻(たとえば単音節か複音節か)、意味(その語の持つイメージや、類義語などの影響)などの要因が絡んでいます。たとえば、「男性名詞には“高さ、大きさ、強固さ”のようなイメージを持ち、女性名詞には“広さ、包容力”のようなイメージを持つ」という説があります。もちろんすべての名詞がこのパターンで分類されるわけではありません。他にも上で書いたように音韻や形態がからんでいるからです。しかし、たとえば「山」や「木」や「岩石」などは(その力強さから)男性名詞ですし、「海」「世界」「地球」などは(その包容力のある広さから)女性名詞に分類されるという一面もあり、そういう意味ではこの一般化も部分的ながら直感に合っているかもしれないなと思います。

    > 3.Common Errors:ドイツ人にも頻繁に犯す文法上の誤りはあるのでしょうか。
    > ある場合,どのような誤りを犯すのでしょうか。

    音韻レベルであれば、単語の中の音を入れ替えてしまうという言い間違いはあります(日本語の「とうもころし」など)が、文法上の誤りですと、「格の錯誤」などが挙げられるかもしれません。もっとも、これは単なる言い間違いの場合もありますし、地域差(方言など)が関与している場合もあります。ドイツ語では、動詞がその目的語に対して要求する格や、前置詞がその目的語に与える格が決まっています。それを誤ることはあります。しかし、どの言語の母語話者もそうでしょうが、文法上の誤りはなかなか起こりにくいですね。やはり音韻的な言い間違いのほうが圧倒的に多いとは思います。

  • #303 返信

    四九三

    ご丁寧な回答を有難うございました。非常に理解できました。すみません、再度お伺いしたいことがあります。

    1.可算名詞と不可算名詞の分類があるということは、学習者は英語同様ドイツ語でもしばしばその判断に悩まされるということになるのですね。私が購入した辞書には何故かそれぞれの名詞にその説明がないのですが、これは購入した辞書に拠るのですね。てっきりドイツ語には可算・不可算の分類分けはないか、或いは少ないのかな、と期待(?)はしていたのですが・・・。英語同様に分類するといっても、これまた英語の分類分けがそのまま応用できるという訳ではないのかと思いますが、如何でしょうか。

    2.人称語尾の省略:Ich lieb’ dichといった表現を見かけたことがありますが、これは決まった表現なのでしょうか。それとも口語的に人称語尾の-eが省略された形なのでしょうか。このような例は他にもあるのでしょうか。

    3.冠詞を用いて2格を造るよりも前置詞vonを使うこと、或いは3格と4格の使い分けが以前程厳密ではなくなっていると聞いたことがありますが如何でしょうか。

    宜しくお願いします。

  • #304 返信

    tmasa
    キーマスター

    こんにちは。

    > 1.可算名詞と不可算名詞の分類があるということは、学習者は英語同様ドイツ語でも
    > しばしばその判断に悩まされるということになるのですね。

    そうですね。日本語の直感では、このあたりの区別は悩ましいところです。言語的に、常に無冠詞で使われたり、複数形がなく常に単数形で用いられるものはひとつひとつを数え上げられないということですので不可算名詞です。また、常に複数形のみで扱われるものは一つ一つの個体を意識して使えない、つまり集合的なものだということですので集合名詞として扱われ、これらも不可算名詞であるといえます。このように、具体的な文例の中などで使い方を理解していくことも有益かもしれません。

    > 私が購入した辞書には何故かそれぞれの名詞にその説明がないのですが、これは購入
    > した辞書に拠るのですね。

    そうですね。それぞれの単語項目ごとに「この名詞は不可算名詞である」といったような記述がしてある辞書は多くはないかもしれません。その代わり、辞書によっては「常に/主に複数形で用いる」「常に/主に無冠詞で用いる」などのような記述がしてあることはあります。これがその(不)可算性の手がかりにはなります。

    > 英語同様に分類するといっても、これまた英語の分類分けがそのまま応用できるという
    > 訳ではないのかと思いますが、如何でしょうか。

    ひとつひとつの事例を比べて調査したことがありませんので分かりませんが、例としては、少なくとも次のような対比はよく知られています。
    (英語) furniture (単数形のみ、複数形なし)
    (ドイツ語) Moebel (主に複数形のみ、単数形は稀)
    どちらも「家具(のセット)」を意味しますが、英語では単数形で「(一式の)家具」という概念を作り出しており、much/little furniture というようにその数量を修飾できます(質量名詞、または物質名詞と呼ばれる不可算名詞)。他方、ドイツ語では最初から複数形(集合名詞)で表現されますので、たとえば viel Moebel のように、「集合体」に対してその数量を修飾するというようなことはできません(こちらは集合的な不可算名詞)。

    > 2.人称語尾の省略:Ich lieb’ dichといった表現を見かけたことがありますが、
    > これは決まった表現なのでしょうか。それとも口語的に人称語尾の-eが省略された形
    > なのでしょうか。このような例は他にもあるのでしょうか。

    はい、これは「口語的に人称語尾の-eが省略された形」です。このように、1人称単数の形(主語が ich のとき)のときの動詞の語尾 -e が脱落する例がほとんどです。たとえば、
    Ich hab’ mal gehört, …
    Ich glaub’ nicht.
    Das hätt’ ich auch gedacht.
    Ich trink’ nicht viel.
    など、いろいろな動詞で口語的に -e が脱落します。
    あと、特殊ですが、語調を整えるという理由で(歌の歌詞などにも多い)、3人称単数語尾の -t なども、落ちてしまうこともあります。念のため。

    > 3.冠詞を用いて2格を造るよりも前置詞vonを使うこと、或いは3格と4格の使い分け
    > が以前程厳密ではなくなっていると聞いたことがありますが如何でしょうか。

    2格の使用が少なくなってきているということを述べた文に “Der Dativ ist dem Genitiv sein Tod” 「3格は2格の終わりをもたらす」という文があり、同名の本(<Der Spiegel> という雑誌の読者投稿コーナーに寄せられた “ドイツ語”に関する質問と回答集)も大ヒットしました。2格名詞句をめぐる近年の傾向としては、(A)2格支配の前置詞( wegen, statt など)の目的語が3格に置き換わってきているというもの、そして今回ご指摘の(B)2格よりも前置詞 von を使うほうが多くなっている、ということなどが挙げられます。ただし、「~の…の」のように属格が複数並ぶような場合には、2格を2回続けたり von+3格を2回続けたりするよりは、2格と von+3格を組み合わせるほうがスマートになるような場合もあります。
    3格と4格の使い分けが薄れているという点につきましては、
    (動詞の目的語)
    Sie lehrt ihn das Klavierspiel. … (1)
    Sie lehrt ihm das Klavierspiel. … (2)
    本来 lehren は「ヒトの4格-モノの4格」を取る (=(1)) が、geben や schenken など「ヒトの3格-モノの4格」を取る動詞の影響で、(2) のように ihm とする話者もいるようです。
    この点については、たとえばベルリン地方の方言では100年以上も前から「3格と4格の区別をしない」という傾向が定着しているという説もあり(→ 【Akkudativ】という語が作られているほどです(もちろん Akkusativ + Dativ の造語))、地域差や個人差など、多角的に観察する必要がありそうです。
    (他の例) 標準ドイツ語 Das kann mir nicht passieren. (mir は3格形)
    ベルリン方言 Dit kann mich nich passier’n. (mich は4格形)
    (前置詞の目的語)
    mit den Leuten → mit die Leute (/mitte Leute/)
    本来は3格支配のはずの mit の目的語が4格になっている例です。これも方言によってはこれが“標準的”である地域もあります(ベルリン地方もそう)。理由としては「発音上のいいやすさ」に起因していると考えられています。

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