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  • #289 返信

    Shinji

    Anthony Fox (1990) によると、ドイツ語の [pf] と [ts] は pfropf や zwei など語頭で子音連続を形成できるので単一の音素と見なすのが良いが、[t∫] はほとんど語頭に立たずまた他の子音ともつながらないので音素の連続 /t+∫/ と見なすのが良いとあります。一方、音素 /t∫/ を立てる説明も多く見かけます。これについてどう考えますか。(Anthony Fox. 1990. The Structure of German. Oxford University Press. ISBN
    0198158211. 日本語訳: 福本義憲訳, ドイツ語の構造, 三省堂. ISBN 4-385-35444-8)

    http://en.wikipedia.org/wiki/German_phonology#Fortis-Lenis_Pairs では、硬音(fortis)・軟音 (lenis) の対として、/p-b/, /t-d/, /k-g/, /s-z/, /∫-3/ が挙げられています。北部の無声・有声の対立と、南部の有気・無気の対立を含めた言い方です。一方、/f-v/ は、/v/ が常に有声音なので、硬軟の対ではないと書いてあります。しかし形容詞 brav を考えると、/f/ と /v/ を組にするのが自然です。これについてどう考えますか。

  • #290 返信

    tmasa
    キーマスター

    単一の音素かどうかを調べるテストに Opposition というのがあります。これは「代替可能性」を見るもので、いわゆる Ersatzprobe です。最小限に交代可能な音素の部分を単一の(異なる)音素であると見るテストです。/pf/, /ts/, /t∫/ がそれ以上分解して他の音素と代替不可能であれば、それらはその形でセットであり、それ以上は分解できない、つまりそれで単一音素だということがわかります。
    なお、/t∫/ はもともとドイツ語にはなく、外来語に見られる音のようですので事情が違いますが、/pf/ と /ts/ が単一の音素であることは、歴史的にも見てとれますのでご紹介します:
    古高ドイツ語 (Althochdeutsch) の成立時、それまでのゴート語やアングロサクソン語などの古ゲルマン語からの音韻変遷が起こりました。【第二次子音推移】ないしは【古高ドイツ語音韻推移】と呼ばれるものです。この子音推移では、pp → pf, tt → tz, kk → chなどの子音重複に関する音韻推移が起こっています。
    (例)<アングロサクソン語> appel → <古高ドイツ語> apful /pf/
    <古ザクセン語> settian → <古高ドイツ語> setzen /ts/
    <古ザクセン語> wekkian → <古高ドイツ語> wechan
    /pf/ や /ts/ が、歴史的には二重連続子音から派生したものだということを考えると、こえはこれ以上分解できない、これで単一の音素だということになります。
    /t∫/ はゲルマン語には本来はなかった音のようですので(例:Deutsch はラテン語の theodiscus から来ている)、この観察ですと /t∫/ はどのようになるのかちょっと分かりませんので、Ersatzprobe のほうもやってみます。
    Pflock — Block
    Pflug — klug
    Pfropf — Tropf — trotz
    /pf/ はこれ以上分解した形では代替不可能です。”Ptlock” とか “Trosf” など、/p/ と
    /f/ は分解できません。従って、/pf/ は単一音素であるといえます。/ts/ も同様。
    rutschen — rufen
    deutsch — Deut
    /t∫/ もこれ以上小さく分解して何かと代替可能というわけではなさそうです。
    一応、私としては、/pf/, /ts/, /t∫/ はいずれも同じ Affrikaten (破擦音) の単一音素であると考えています。

    /f/ と /v/ については、私も同意見で、対で考えてよいと思っています。
    弁別素性 (distiktive Merkmale) としては、
    /f/: [+labial, +frikativ, -stimmhaft]
    /v/: [+labial, +frikativ, +stimmhaft]
    で、有声と無声の対立を認めることができると思います。その具体例としては、挙げられている brav — ein braves Kind や、Motiv — Motive など。
    よろしくお願いします。

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